UNIX入門:付録:UNIX Hierarchyと歴史
UNIX Hierarchy
下記は,UNIX Hierarchy の中で,本サイトで学べる部分のみを抜粋。
[ノート]参考程度にしてください。あくまでも UNIX Hierarchy の部分訳です。
- 初心者(Beginner)
- ターミナルの概念に確信が持てない。
- ディレクトリの移動の仕方を説明できない。
- 入力後,リターンキーを打つのに手間どる。
- 入門者(Novice)
ls
が使える。- C言語のことを耳にしたことはあるが,使ったことはない。
rm
で初めて失敗する。
- 利用者(User)
- 正規表現のことを聞いたことはあるが,見たことはない。
- オプションに
-
が付くことを知っている。 - ディレクトリの削除ができない。
- 利き手,腕利き(Knowledgeable User)
mv
が使える。sed
を一度は使った。- C のプログラミングの仕方を学んだ。
make
は意気地なしのためにあると思っている。
- 専門家(Expert)
- 必要なときに
sed
を使う。 &&
と||
の意味が分かる。- C のプログラムを
vi
で書き,cc
でコンパイルする。
- 必要なときに
- ハッカー(Hacker)
- 環境変数について説明できる。
- Bourne Shell(Bシェル)のスクリプトを書く。
- C のプログラムを
cat >
で書き,cc
でないものでコンパイルする。
- グル(Guru)
- アセンブリ・コードを
cat >
で書く。 - パッチをあてカスタマイズする。
- UNIXのことなら,ほとんど直ぐさま答えられる。
make
を複数のコマンドアーカイブとして使う。
- アセンブリ・コードを
- ウィザード(Wizard)
- バイナリのパッチをあて,バグを修正する。
- Dennis,Bill,Ken とファーストネームで呼び合える。(ちなみに,Bill とは,ビル・ゲイツのことではありません。)
「UNIX」の由来とその始まり
「UNIX」とは?
「UNIX とは,X/Open Company の登録商標で "Uniplexed Information and Computing System" の略である。」
という説明が登録商標の観点からは必要であるが,下の「その始まり」でも述べるように,"Multics" を皮肉った造語であって,元来は略語ではない。現在,UNIX と言った場合,それは UNIX系 OS 全般を指す言葉として使われており,大きくは,BSD系と System V系に分けられる。前者は,FreeBSD,OpenBSD,NetBSD,Solaris,Darwin(Mac OS X)等が該当する。(図による詳細な系譜については UNIX History を。)
UNIX のソースは,C言語で書かれており,公開されている。
UNIX は,マルチタスク,マルチユーザ型の OS。
その始まり
1965 | MIT (Massachusetts Institute of Technology),GE,AT&Tベル研究所がマルチタスク,マルチユーザ,仮想メモリを実現したOS,「Multics」を共同開発。しかし,開発しても経済的な OS にはなかなかならず,AT&Tベル研究所 (現ベル研究所) は1969年に撤退(ベル研究所, 2000)。 |
1969 | AT&Tベル研究所の Ken Thompson が1969年,Multics 上のゲーム "Space Travel" を開発,それを GE の OS (GECOS) 用の Fortran に翻訳。このゲームは,太陽系の中を宇宙船を操作し,惑星に着陸させるようなものであったという。ところが,計算に75ドルもかかることがわかり,Dennis Ritchie と Thompson は,がらくた同然の(little-used) コンピュータ,PDP-7でこのゲームが走るようにしたという。このときに UNIX が生まれるのである。Ritchie (1993) によると,PDP-7は 8K 18-bit words of memory の機械であったという。二人の共同研究者だった Brian Kernighan が,撤退した「Multics=Multi+cs」を皮肉って「UNIX=Uni+cs」と名付けるよう示唆した(Ritchie, 1980)。 |
1971-74 | 1971年,Thompson が B言語を作る。Ritchie がそれから "New B",そして,C言語へ(Cの完成は1973年頃)。Thompson と Ritchie が,その C言語で UNIX のソースを書く。ハードウェアに依存しない,移植性のある世界初のOSが誕生することとなる。 |
1976-77 | Thompson が母校の UC Berkeley で1年間講義。このときの院生に Bill Joy がいる。Bill Joy は,79年に修士号を取り,Thompson が去った後,BSD (Berkeley Software Distributions) のメイン・デザイナーとなる(McCormick, 1997 参照。ちなみに,Bill Joy は,Sun Microsystems の共同設立者であり,エディター vi の作者)。 |
1983 | AT&T側が1月に System V を発表し本格的に商用版に乗り出し,UC Berkeley が9月に 4.2BSD を発表。4.2BSD は,仮想メモリや TCP/IP を内臓するなど,現在の UNIX のプロトタイプ。 |
Dennis Ritchie (standing) and Ken Thompson begin porting UNIX
to the PDP-11 via two Teletype 33 terminals. (Source: Bell Labs.)
参考文献
Bell Labs (2000), "The Creation of the UNIX* Operating System," mimeo.
Ritchie, Dennis M. (1980), "The Evolution of the UNIX Time-Sharing System," Lecture Notes in Computer Science #79: Language Design and Programming Methodology, Springer-Verlag, reprinted as AT&T Bell Laboratories Technical Journal 63 No. 6 Part 2, October 1984, pp. 1577-93.
Ritchie, Dennis M. (1993), "The Development of the C Language", mimeo.
McCormick, Gavin (1997), "The Berkeley Link," mimeo.