日本経済論:第21回講義ノート
2012年10月29日 月・3
後期第6回 メインバンク・システム (2)
<今日の内容>
1 企業金融のベンチマーク 〜MM定理〜
2 メインバンク・システムのいくつかの仮説・理論
2.1 リスク・シェアリング説
2.2 モラル・ハザードとモニタリング機能説
[次は次回]
2.3 倒産回避機能説
2.4 情報発信機能説
1 企業金融のベンチマーク 〜MM定理〜
●企業の市場価値
●資本構成
●レバレッジ・レシオ
[MM定理](モジリアーニ・ミラー定理)
(1) 情報の対称性
(2) 取引費用ゼロ
(3) 競争的市場
(4) 租税なし
⇒ 企業の市場価値は,資本構成に依存しない。
●現在価値
●機会費用と資本コスト
2 メインバンク・システムのいくつかの仮説・理論
2.1 リスク・シェアリング説
●貸出金利安定化機能
●金融費用調整と企業の利益安定化機能
2.2 モラル・ハザードとモニタリング機能説
- [例]例示のための基礎データ
今期 来期 営業利益 90 110 経営者の効用のみに影響する投資 50 0 その投資からの経営者の効用 35 0 - [仮定]市場金利10%,経営者株式100%所有
■Q. 無駄な投資をしないとき,経営者の株式の価値は?
■Q. それでは,無駄な投資をしたときは?ただし,情報は完全とする。
■Q. 投資実績が事後に市場に伝わる場合は,どうか?
- 事前に経営者株式60%売却
情報 事前 事後 合計 経営者の利益増 不完全 114 35 56 205 15 完全 84 35 56 175 −15 ●隠れた行動
●モラル・ハザード
[注意]市場は,上記表を予測可能
経営者の株式30%以上売却 ⇒ 無駄な投資のシグナリング ⇒ 情報:完全 ⇒ 経営者の利益増:−15
∴ 無駄な投資しない
※ 190x + 35 + 140(1−x) ≥ 190
- 経営者株式40%所有のケース[株式事前売却:なし]
投資 市場価値 経営者の効用 経営者の利益 株式 負債 企業 経営者分 他の株主分 あり 56 84 0 140 35 91 なし 76 114 0 190 0 76 ●モニタリング・コスト
■Q. モニタリング・コストをかけずに,無駄な投資をさせない方法はないのか?
- 銀行融資による公開買付自社株買い:50%,買付企業価値=150
投資 市場価値 経営者の効用 経営者の利益 株式 負債 企業 経営者分 他の株主分 あり 52 13 75 140 35 87 なし 92 23 75 190 0 92 ※ 35 + 0.4(140−xP)/(1−x) ≤ 0.4(190−xP)/(1−x)
x:自社株買い比率
P:買付企業価値