現代経済学応用:第27回講義ノート

2012年12月4日 火・3[新]現代経済学応用B[旧]ミクロ経済学B

後期第12回 メカニズム・デザイン(4) ナッシュ遂行

<今日の内容>
1 ソロモン王の知恵
 1.1 「ソロモン王の知恵」
 1.2 「知恵」:ナッシュ遂行の不可能性
2 ナッシュ遂行
 2.1 マスキン単調性
 2.2 マスキンの定理

※[参考]奥山 17章 17.3

1 ソロモン王の知恵

1.1 「ソロモン王の知恵」

[例27.1]ソロモン王の知恵 (奥山 17章 例17.8)
・主体:女性A,女性B
・3つの帰結
 帰結a:赤ちゃんを女性Aの子供とする
 帰結b:赤ちゃんを女性Bの子供とする
 帰結d:赤ちゃんを2つに切る

★ナッシュ遂行しないという「知恵」

1.2 「知恵」:ナッシュ遂行の不可能性

<選好順序 (環境,E)>
       A  B
Aが真の母親:abd bda
Bが真の母親:adb bad

<社会的選択関数 (F)>
F(abd, bda) = a
F(adb, bad) = b

<戦略 (S)>
   戦略1      戦略2
S = {「私の赤ちゃん」,「私の赤ちゃんではない」}

<帰結関数 (g)>

B
戦略1戦略2
A戦略1da
戦略2bd

[ケース1]Aが真の母親の場合 ⇒ ナッシュ均衡:s* = (戦略2,戦略1) ⇒ g(s*) = b ≠ F(abd, bda)
[ケース2]Bが真の母親の場合 ⇒ ナッシュ均衡:s** = (戦略1,戦略2) ⇒ g(s**) = a ≠ F(adb, bad)

 メカニズム (g, S) は,F をナッシュ遂行しない

2 ナッシュ遂行

2.1 マスキン単調性

●下位集合 (劣位集合)

●マスキン単調性 (Maskin monotonicity)

[例27.2]「ソロモン王の知恵」の社会的選択関数は,マスキン単調性を満たさない。

[例27.3]マスキン単調性を満たさないボルダ方式 (奥山 17章 例17.9)
・帰結:a, b, c, d
・1位=4点,2位=3点,3位=2点,4位=1点

2.2 マスキンの定理

●拒否権の不在 (No Veto Power)

[定理27.1]マスキンの定理 (奥山 17章 定理17.11)
・ナッシュ遂行可能であれば,社会的選択関数はマスキン単調性を満たす。
・主体数が 3 以上のときは,社会的選択関数がマスキン単調性と拒否権の不在を満たせば,ナッシュ遂行可能である。