企業と経済・応用:第6回講義ノート
市場の機能と政府の役割:部分均衡分析 (5) (2011/5/23)
- [今日の問題意識]
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第1回講義 例1.1 (教科書練習問題2.3, pp. 43-44)
■Q.取引費用が大きいために,厚生経済学の第1基本定理が成り立たないとき,すべての主体が納得のいく方策はあるのであろうか。 - [今日の内容]
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1 厚生経済学の第1基本定理(復習)と今日の問題意識
2 厚生経済学の第2基本定理
3 税/補助金の分類と供給曲線 - [キーワード]
- 闇市場,厚生経済学の第2基本定理,一括式,所得再分配政策,従量税,従価税,供給曲線
- [教科書]
- 第2章2.4.4〜2.4.6
- [関連練習問題]
- 教科書 問題2.2, 問題2.3 (第2章, pp. 41-44)
1 厚生経済学の第1基本定理(復習)と今日の問題意識
厚生経済学の第1基本定理 (教科書 定理2.10, p. 31;前回講義 定理5.1)
取引費用がなければ,市場均衡での所得分配 → パレート効率
★市場均衡 vs. 市場分断化
第1回講義 例1.1 (教科書 練習問題2.3, pp. 43-44)
πA | πB | πC | πT | πU | πV | 総余剰 |
27.5 | 12.5 | 0 | 17.5 | 7.5 | 0 | 65 |
12.5 | 10 | 7.5 | 7.5 | 10 | 12.5 | 60 |
- 取引費用がない場合
市場分断化政策 → 闇市場 - 取引費用がある場合
市場分断化政策 → 総余剰最大ではない
■Q. A社,B社,Tさんから C社,Uさん,Vさんへの補償について,自主的な交渉が進まない場合,どのような政策を実施すれば良いであろうか。
2 厚生経済学の第2基本定理
●一括式 (lump-sum)
●所得再分配政策
[例6.1]第1回講義 例1.1 (教科書 練習問題2.3, pp. 43-44)
πA | πB | πC | πT | πU | πV | 合計 | |
分断化 | 12.5 | 10 | 7.5 | 7.5 | 10 | 12.5 | 60 |
市場均衡 | 27.5 | 12.5 | 0 | 17.5 | 7.5 | 0 | 65 |
一括税 | |||||||
一括式補助 | |||||||
再分配後 |
■Q. 所得再分配政策を実施することを主体が知っていても,実現可能?
[定理6.1]厚生経済学の第2基本定理 (教科書 定理2.11, p. 33)
パレート効率な所得分配 → 市場均衡での所得分配に一致する一括式所得再分配政策が存在
3 税/補助金の分類と供給曲線
■Q. 一括式以外,例えば,所得税/補助だと駄目?
●3つのタイプ
一括式
従量式
従価式
3.1 一括税と供給曲線
π = px - C(x) - T
[ファクト6.1]一括税の場合,利潤最大化の1階条件は,
p = C'(x)
3.2 従量税と供給曲線
π = px - C(x) - tx
[ファクト6.2]従量税の場合,利潤最大化の1階条件は,
p - t = C'(x)
3.3 従価税と供給曲線
π = px - C(x) - tpx
[ファクト6.3]従価税の場合,利潤最大化の1階条件は,
(1 - t)p = C'(x)
[まとめ6.1]一括式以外の課税,補助金は,供給曲線をシフトさせる。