企業と経済・応用:第7回講義ノート
消費者 (1) (2011/5/30)
- [今日の問題意識]
- ■Q.効用の大きさが金銭で表現できない場合,主体の主観的評価,特に,消費者の効用をどのように表現すれば良いのであろうか。その性質は?
- [今日の内容]
-
1 序数的効用理論に基づく消費者の効用:選好順序
2 選好順序と無差別曲線
3 選好と主観的交換比率 - [キーワード]
- 序数的効用,選好順序,弱選好順序,強選好順序,単調性,完備性,推移性,無差別,無差別曲線,限界代替率,限界代替率逓減,選好の凸性
- [教科書]
- 第3章 3.1〜3.2.4
- [関連練習問題]
- 練習問題7.1 (本講義ノート末),教科書 第3章末 問題3.4, 問題3.9, 問題3.10
1 序数的効用理論に基づく消費者の効用:選好順序
●消費計画
財Xと財Yの2商品の場合
消費量の組 (x,y)
x
:財Xの消費量,y
:財Yの消費量
[例題7.1]消費計画 (x,y) は,どのように図で表すことができるか。例えば,消費計画 (1,2) を図で示しなさい。
●選好順序(preference ordering)
強選好順序 B >
A:消費計画Aから消費計画Bへ移動すれば改善
「AよりBを選考」
弱選好順序 B ≥
A:消費計画Aから消費計画Bへ移動して悪化しない
「少なくとも同程度選好」
[例題7.2]消費計画 A=(1,2), B=(3,2), C=(4,4) があったとき,あなたの選好順序を示しなさい。
●完備性(completeness)
●推移性(transitivity)
●単調性(monotonicity)
2 選好順序と無差別曲線
●無差別
B ≥ A かつ A ≥ B
各消費計画に対し,それと無差別な消費計画を図示 → 無差別曲線
[例題7.3](1週間のデート計画)ドライブ(商品X)と食事(商品Y)について全くこだわらない太郎さん。但し,いずれも好きである。
(1) 消費計画 (3,2) と無差別な消費計画を図示しなさい。
(2) その消費計画からドライブ1回,食事2回を増やしたときの消費計画を示し,その消費計画を通る無差別曲線を図示しなさい。
(3) 消費計画 (3,2) を通る無差別曲線上の消費計画と(2)で図示した無差別曲線上の消費計画を任意に選び,前者を消費計画A,後者を消費計画Bとする。AとBの間の選好順序を示しなさい。
[ファクト7.1] (教科書 ファクト3.5, pp. 53-54)
選好順序が完備性,推移性,単調性を満たすと仮定しよう。然らば,
(1) 無差別曲線は厚みを持たない。
(2) 2つの無差別曲線は交わらない。
(3) 無差別曲線は右下がり。
3 選好と主観的交換比率
[例題7.4]例題7.3の太郎さんについて,消費計画 (3,2) からドライブを1回増やすとき,食事を最大で何回あきらめる用意があるか。すなわち,ドライブ1回当たりの食事の主観的交換比率はいくらか。
●限界代替率(Marginal Rate of Substitution, MRS)
●限界代替率逓減
●選好の凸性 (convexity)
[練習問題7.1]
(1) 効用の大きさが測定可能な(ア)的効用では,異なる消費者の間の効用が(イ)可能となる。これに対し,選択肢上の(ウ)のみを与える(エ)的効用では,効用自体が測定可能である必要はない。
(2) 消費計画上の選好順序は,あくまでも,2つの消費計画間での比較となるので,3つ以上の間の消費計画の比較のために,(ア)性と(イ)性が必要となる。例えば,消費計画 A=(3,2) と B=(1,4) があったとき,いずれの方を同程度好むかを示せないとき(ア)性を満たさない。もし消費計画Bから他の消費計画 C=(2,5) に移動したときに改善するのであれば,選好順序は(ウ)性を満たす。このとき,もし消費計画AよりもBを好むのであれば,(イ)性によって,AよりもCを好むこととなる。選好順序は,(ア)性によって,消費計画上の(エ)曲線群となって現れる。(イ)性と(ウ)性を満たせば,2つの(エ)曲線は(オ)ことはない。また,(ウ)性の下では(エ)曲線は[水平・垂直・右上がり・右下がり]となる。