ミクロ経済学:第19回講義ノート

2014年10月14日 火・3[新]ミクロ経済学B[旧]現代経済学応用B

交換経済 (3) 効率性 (1)

[今日の内容]
1 個人合理性とパレート効率性
2 厚生経済学の第1基本定理
[今日の問題意識]
■Q. 部分均衡分析で成り立った市場の機能(「ミクロ経済学A」第4回講義)は,序数的効用の下での一般均衡でも成り立つのであろうか。
・厚生経済学の第1基本定理 → 今回
・厚生経済学の第2基本定理 → 次回
[キーワード]
個人合理性,パレート改善,パレート支配,パレート効率性,契約曲線,パレート効率性の1階条件,厚生経済学の第1基本定理
[参考書]
奥山 6章 6.1

1 個人合理性とパレート効率性

【考えてみよう!】
各主体が取引に参加するとすれば,どのような条件が最低限,必要であろうか。裏返せば,取引に参加しないことを選ぶ方が良い資源配分は?

●個人合理性(Individual Rationality)

[ファクト19.1]
その主体のみからなる提携によってブロック ⇔ その主体にとって個人合理的ではない

【考えてみよう!】
全員一致で不満がでる資源配分は?

●パレート改善

●パレート支配

●パレート効率性(Pareto Efficiency)

●契約曲線(Contract Curve)

[ファクト19.2]
全体提携によるブロック ⇔ パレート支配

【考えてみよう!】
「平等」「格差のない」ことは,パレート効率か否か,考えてみよう!
例えば,例17.1(前々回)のAさんとBさんに,同じカレーライスを(すべての商品に対し同じ量で)配分するといった提案に対し,AさんとBさんは,どのように反応するであろうか?
【ヒント】
(1) エッジワース・ボックスにその資源配分を図示
(2) それを全員提携がブロックするか否かを確認

[ファクト19.3]パレート効率性の1階条件
パレート効率な資源配分では,
  AさんのMRS = BさんのMRS

2 厚生経済学の第1基本定理

■Q. ワルラス均衡での資源配分は,個人合理性やパレート効率性を満たすのであろうか?

[定理19.1]厚生経済学の第1基本定理(The First Fundamental Theorem of Welfare Economics)
ワルラス均衡での資源配分は,パレート効率である。

[証明]
ワルラス均衡の資源配分 ⇒ コアの資源配分(∵ ファクト18.1,前回講義
⇒ 個人合理的,かつ,パレート効率

[1階条件を使った証明]
ワルラス均衡の資源配分 ⇒ AさんのMRS = BさんのMRS
⇒ パレート効率の1階条件