企業と経済・応用:第18回講義ノート

効率性 (1) 交換経済 (2011/10/10)

[今日の問題意識]
■Q. 部分均衡分析で成り立った市場の機能(第5回第6回講義)は,序数的効用の下での一般均衡でも成り立つのであろうか。
[例17.1](前回講義,教科書 5章末 問題5.8)あるカレー店では,カレー(商品X)とライス(商品Y)の量を自由に選べる。カレー店の商品XとYのクーポン券をAさんは2単位と9単位,Bさんは10単位と1単位持っているとする。
■Q1.Aさんはカレーとライスの比率を2対3,Bさんは2対1にこだわっているとき,個人的にも不満がなく,2人全体でも合意可能な資源配分は実現するのであろうか。
■Q2.そのような資源配分は,「市場」であれば実現できるのであろうか。逆に言えば,「市場」以外に実現できる方法はあるのであろうか。
■Q3.AさんやBさんの好みが変わっても,「市場」は2人を満足させることができるであろうか。例えば,Bさんがこだわりがなくなった場合は,どうであろうか。
前回:市場での取引
今回:Q1, Q2, Q3
[今日の内容]
1 個人合理性とパレート効率性
2 厚生経済学の第1基本定理
[キーワード]
個人合理性,パレート改善,パレート効率性,契約曲線,厚生経済学の第1基本定理
[教科書]
6章 6.1
[関連練習問題]
教科書 6章末 問題6.3, 問題6.4

1 個人合理性とパレート効率性

■Q. 各主体が取引に参加するとすれば,どのような条件が最低限,必要であろうか。裏返せば,取引に参加しないことを選ぶ方が良い資源配分は?

●個人合理性

■Q. 全員一致で不満がでる資源配分は?

●パレート改善

●パレート効率性(Pareto Efficiency)

●契約曲線(Contract Curve)

[ファクト18.1]純粋交換経済において,パレート効率な資源配分では,消費者間の限界代替率が等しい。

■Q. 「平等」な資源配分は,パレート効率であろうか?

[例題18.1](教科書 6章末 問題6.4(1)) 「平等」な資源配分を全員一致で棄却する例
例17.1(前回講義)において,各主体にすべての商品について半々で分け合う資源配分を考えよう。
(1) エッジワース・ボックスにその資源配分を図示しなさい。
(2) それよりもパレート改善する他の資源配分を探しなさい。
(3) そもそも,パレート効率な資源配分は,いずれであろうか。すべて求めなさい。

2 厚生経済学の第1基本定理

■Q. ワルラス均衡での資源配分は,パレート効率性を満たすのであろうか。

[定理18.1]厚生経済学の第1基本定理(The First Fundamental Theorem of Welfare Economics)
ワルラス均衡での資源配分は,パレート効率である。

[レポート課題10/10](締め切り:次回講義 +6)
*A4レポート用紙を使用すること。用紙が汚い,破れている等の場合には採点対象にはしない。
商品Xと商品Y,消費者AとBの2商品・2消費者の純粋交換経済を考えよう。各消費者の効用関数は,次の通りである。
  UA = min{xA,2yA}
  UB = xB + yB
各消費者の初期付与は,例17.1 (前回講義) と同じであるとする。
(1) Aさんの消費計画平面にAさんのオッファー曲線を描きなさい。ただし,なぜ,そのような図になるのか,説明すること。
(2) Bさんの消費計画平面にBさんのオッファー曲線を描きなさい。ただし,なぜ,そのような図になるのか,説明すること。
(3) ワルラス均衡での資源配分がエッジワース・ボックスのいずれの点になるのか説明し,ワルラス均衡での相対価格 (pX/pY) がいくらになるか,説明しなさい。
(4) エッジワース・ボックスに契約曲線を描きなさい。ただし,なぜ,そのような曲線になるのか,説明すること。
(5) すべての消費者が「平等」に消費する資源配分をエッジワース・ボックスに示し,全員一致でその資源配分を棄却することを説明しなさい。
(6) 厚生経済学の第1基本定理が成り立つことを説明しなさい。